The Fury / フューリー

「映画三昧の年末を！」と思っていたが、あまりのラインナップの悪さにウンザリ！
先日の「レッド・ドラゴン」と「シン・シティ」がオレ的ピークって、
淋しすぎる。

そこで今回は11月24日プレデターの回でさわりを書いた「フューリー」
いつかは触れねばならないと思っていたデ・パルマフィルム。
いよいよ書く日がやってきた。

The Fury / フューリー

冒頭のあらすじは、
「1977年・中東。ピーター（カーク・ダグラス）とその息子ロビンは
最後の休日を過ごしていた。
どうやらロビンは常人にはない特殊能力を持つらしく、
彼はそのことで、父ピーターの20年来の友人チルドレス（ジョン・カサベテス）
に預けられ、シカゴで暮らすことになるのだった。」
　　　　　＊
この辺の状況説明は、無い。全て会話の中で語られる
　　　　　＊
「チルドレスは『深い話がある』とロビンをその場から外す。
深い話もそこそこに、やがてチルドレスもその場から去る。
そして突然の銃撃！マシンガン乱射である。
逃げるピーター、泣き叫ぶロビンとかばうチルドレス。
ボートの爆破を辛くものがれ、負傷したピーターが見たものは、
銃撃した男達をねぎらうチルドレスであった。」
　　　　　＊
　　　　　＊
こんな感じ。
ざっと書けてしまうくらいの導入なのだが、
銃撃シーンまでわずか5分50秒。

ただし、映画冒頭の20世紀フォックスのロゴからクレジットに入り、
本編映像がスタートするのが約2分後であるから、
正確には約3分50秒で物語が動いているのだ。

ピーターがチルドレスの裏切りに気づくのがおよそ8分20秒
同様に2分差し引くと、およそ6分20秒。

わずか3分や6分の間である。
当然ピーターやチルドレスが何者かは語られていない。
ロビンが持つ能力や、何のために預けられるのかも説明はない。
しかし、カーク・ダグラスとジョン・カサベテスだ。
ましてあの状況ならどう見てもカサベテスが悪人だ。

こんなデ・パルマの「見てりゃわかるやろ！」的な、或いは
説明不足になりかねない導入は、映画文法としても
正解ではないか？と思うのだがどうか？
少なくとも、姿を現すまで40分かかるプレデターよりも、
映画としてのツカみは優位だと思う。


また、多くの模倣者を産み出した映像テクニックも見もので、
その１
ヘスターが研究所からギリアンを脱出させるシーンは
約2分間の長回しで撮られている。
カメラに収める演出空間と俳優の配置。これが巧みなため、
観ている側の状況把握が容易で、ハラハラ度は倍増する。

その2
ギリアンは研究所を脱出し、ヘスターが後を追う。
さらにギリアン捕獲のため、男が車で追う。
待ち構えたピーターはその男を射殺。
蛇行した車はヘスターを撥ね殺す。

このシーンを約3分45秒のスローモーションで撮っていが、
かのジャン=リュック・ゴダールはこのシーンを、
“高速度撮影（スローモーション）の正しい使い方”として挙げている。
ジョン・ウーの様になんでもかんでも遅く撮りゃぁいいというモノではないのだ。

The Fury フューリー
興行的にはコケたそうだが、Carrie キャリーの陰に隠れた名作です。

↑けなしたまま終わりにはできませんしね（笑）