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まずは「砂の器」
まぁ、胸はチョイ熱にはなったが、落涙までにはいたらなかった。以下、ネタばれ満載につき、未見の方は注意。
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序盤はわずかな手がかり、「東北弁」と「カメダ」から地道に捜査を重ねる警察陣を粛々と描く。BGMのないドキュメンタリーフィルムの様な映像のクールさと、手がかりに対する回答が小出しにされる様が絶妙。この辺のバランスが崩れるとダレるのであろう。
格好良さが際立つのは、何と言ってもストラトヴァリウスのボーカル、ティモ・コティペルトの如き彫りの深さを持つ、若き日の丹波哲郎であろうね。いずれ〝霊界の宣伝マン〟などという如何わしき異名を取ろうとは思ってもいなかったろう。
丹波〝ティモ〟哲郎の高粘着力捜査により真相は解明され、捜査本部にて全容を発表すると同時に新進の天才作曲家加藤剛による新曲発表会が開かれる。新曲〝宿命〟を熱演する加藤剛と、犯人の持つ、抗えぬ〝宿命を〟白日に晒す丹波ティモ。哲郎コティペルト。この両者を交互に映し出すクラマックスは確かに胸を打つ。
しかし、胸を打つたびにズッコケシーンが挿入される。
ズッコケシーンとは、加藤嘉と子役が迫害行脚を続けるシーン。ここは本来感動のシーンであろう。泣きが入るのはここだと思われる。
だが泣けない。
理由は3つある。
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1つ目は〝迫害行脚〟の行脚。
この2人、お遍路姿なのである。もっとボロボロの着の身着のままで追われるように旅に出て欲しかった。
ちなみに父親役の加藤嘉はハンセン氏病(らい病)の役柄。
当時は迫害必至の①不幸な病に侵され、更には②妻に逃げられた男が④生まれ故郷をすてて⑤6才の息子と2人で⑥あてのない放浪の旅に出るのよ。不幸のドン底なのに、お遍路姿ぁ?
日本特有の美しい四季の描写に彩られた放浪シーンは、誤解を恐れずに書くと何だか楽しそうにも見える。ボロボロの姿でよろよろに這いつくばって頂きたかった。
2つ目は〝迫害行脚〟の迫害度。
もっともっと汚い格好で風雨と好奇の目に晒されて頂きたかった。親子で笑いながら自炊したおかゆを食べるシーンなどいらない。念のため書いておくと、らい病だから迫害せよということではない。「うわぁ、この親子、何も悪くないのにこんな目に遭って…」という可哀相感を感じさせてくれないと、殺人の動機に共感・同情・感動・感涙~できない。(この映画、ハンセン病の保護団体からクレームがつき、撮影中止に追い込まれかけたというから、この辺はやむを得ないかもしれない。)
3つ目は子役の健康そうなお姿。
眉や目元がキリっとして、頬がふっくらした男前なのである。まるで地元サッカーチームの強力FW少年なのよ。あの頃の6才なら読み書きはできていないと思われる。それが病気のオヤジと放浪の旅よ。精神や人格を病むぞ。普通。もっとガリガリの目力のない状態で臨んで欲しかった。
もっと言えばこの子ども、保護された岡山県の寒村から一人逃亡し、逃げ延びた大阪で戸籍の偽造という犯行を犯す。そして〝天才〟作曲家になるのだが、こういう可能性ってロト6を10連続で的中させるような、または冥王星で人型生命体を確認するくらいの可能性ではないだろうか?まぁ、そこを言ってしまうと原作否定になるのでこのくらいにしておく。
全体としては丹波ティモ哲郎コティペルトの格好良さと、島田陽子のオパーイ2シーンに6.7点。
※この後の「点と線」も見てね。
