真言

先日帰省した際、
高速道路の渋滞を避けるために早朝5時30分に出発した。

そのままだとやはり早すぎるので、途中京都に立ち寄り
初詣をすることにした。

その場所は・・・東寺。教王護国寺とも言う。









かつて1度訪れており、宝物殿の様相には圧倒された。
“立体曼陀羅”とはよく言ったものだ。

では、そんな国宝ものの寺、世界遺産での初詣はいかがなものか？

ホコリの様な雪がひらひらする、まだ薄暗いなか、
Jericho一家は東寺に降り立った。

確かに門は開いているが、いわゆる“初詣”とはムードが違う。
とまどいながら、敷地の奥にかすかに灯る明かりを目指す。

そこは「大師堂（御影堂）」であった。

かつて、弘法大師空海が住房としていた建物らしい。









玄関には幾多の履物が並んでいる。
皆、この中にいるようだ。読経の声が粛々と響く。

引き戸を開けてみてオレはようやく気付いた。
ホンモノの“新年明けて初のお参り”なのだ。

ミーハーな正月イベントとはモノが違う。
敬虔である。霊験あらたかである。
「Jerichoのようなエロとヘヴィメタな男が立ち入っていいのだろうか？」
「ましてや息子2号のような
チンポに毛も生えていないガキの来るところではないのではないか？」
くちもとにまとわり付く陰毛を払うかのように、
いや、そんな邪念を払うかのように、オレは唱えた。

ノウマクサンバンダバザラダン
センダマカロシャダソワタヤウンタラタ　カーンマーン

不動明王の真言である。
同じ真言宗だ。あながち間違いではないだろう。

　　　＊＊＊＊＊

これまで初詣は前述のように、正月イベントの色合いが濃かった。
なんでか知らんが、お願い事なんかしたりしていた。

しかし今回は違った。
ノウマクサンバンダ・・・と唱えることしかしていなかったので、
お願い事などしていない。
僧侶の指示のまま、仏舎利を頭と両手で受けてきた。

そう、その時オレは一時的に“無心”だったのだ。
これは凄いことだ。少なくともオレには。
エロとヘヴィメタにまみれた男を一時的にとはいえ無心にさせる。
なすがままに頭を下げ、きゅうりがパパに受け入れる。
恐るべし真言！偉大なり大師様！！

　　　＊＊＊＊＊

お参りを済ませ、車を駐車場から出そうとした時、
入った時には居なかったおっさんが居た。
「ハイ！駐車場代1000円ね！」
嫁が吐き捨てた。
「アホらし！」


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