『先義後利』を秘めつつも、その実ヘヴィメタと映画とエロにまみれる日々 修行が足ら~ん
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その部屋には灯りは点いていなかった。
六畳の和室である。
灯りは北東の方向にある窓から漏れる月の光だけであった。
月明かりにほの暗く照らし出されているのは人の姿であった。
部屋の中ほどに男が正座していた。
男は白地に細いストライプの入ったボタンダウンのカッターシャツを着て、サマーウールのグレーのスラックスを履いていた。
髪を整髪剤で整え眼鏡をかけたその姿は、どこから見てもそこらに居るサラリーマンという風情であった。
Jericho。
それがこの男の名前であった。
Jerichoは目を閉じていた。
その部屋に入って既に2時間は経とうとしているが、Jerichoは目を閉じたままであった。
部屋には物音一つない。
窓の外からは鈴虫や松虫の鳴き声がしていた。
松虫の鳴き声が止んだ時、ふいにJerichoがゆっくりと目を開けた。
ゆっくりと開けられたその双眸には深いとも冥いともいえぬ〝澱〟のようなものが漂っていた。
その〝澱〟は瞳の中でちらちらと燃えているようでもあり、凛とした冷気を放っているようにも見える。
いずれにせよ、なにものも寄せ付けない鋭敏な空気をはらんでいた。
それは通常〝殺気〟と呼ばれるものであった。
Jerichoは膝を立て、手を前に伸ばした。
左手に右手を添えて左へ横に動かした。
押入を開けたのであった。
押入れのふすまは音を立てずに開いた。
Jerichoは押入れに手を伸ばし、中から長い棒状の物を取り出した。
窓からの月明かりに映し出されたそれは、日本刀であった。
…つづく。
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六畳の和室である。
灯りは北東の方向にある窓から漏れる月の光だけであった。
月明かりにほの暗く照らし出されているのは人の姿であった。
部屋の中ほどに男が正座していた。
男は白地に細いストライプの入ったボタンダウンのカッターシャツを着て、サマーウールのグレーのスラックスを履いていた。
髪を整髪剤で整え眼鏡をかけたその姿は、どこから見てもそこらに居るサラリーマンという風情であった。
Jericho。
それがこの男の名前であった。
Jerichoは目を閉じていた。
その部屋に入って既に2時間は経とうとしているが、Jerichoは目を閉じたままであった。
部屋には物音一つない。
窓の外からは鈴虫や松虫の鳴き声がしていた。
松虫の鳴き声が止んだ時、ふいにJerichoがゆっくりと目を開けた。
ゆっくりと開けられたその双眸には深いとも冥いともいえぬ〝澱〟のようなものが漂っていた。
その〝澱〟は瞳の中でちらちらと燃えているようでもあり、凛とした冷気を放っているようにも見える。
いずれにせよ、なにものも寄せ付けない鋭敏な空気をはらんでいた。
それは通常〝殺気〟と呼ばれるものであった。
Jerichoは膝を立て、手を前に伸ばした。
左手に右手を添えて左へ横に動かした。
押入を開けたのであった。
押入れのふすまは音を立てずに開いた。
Jerichoは押入れに手を伸ばし、中から長い棒状の物を取り出した。
窓からの月明かりに映し出されたそれは、日本刀であった。
…つづく。

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